この記事で述べたPropulsionSystemLibrary刷新作業が大きなマイルストンに達成した。漸く、Design-point(定格点)計算と、Off-design(非定格作動)計算を1つのmodelで統合して実行できる機能を実装出来た。

エンジン全体ではまだだが、Component1つに対して動作確認が取れたところまできた。Design-PointとOff-Designの統合を行いたいComponentは幾つか有るが、その中で最も単純なNozzleを今回の対象とした。


Design-Point用のNozzleでは、throat幾何流路断面積がoutput(variable)となっており、通過する流体の質量流量、入口の流体の全圧、全温、外部の静圧から算出される("質量流量input-流路断面積output")。一方、Off-Design用のNozzleでは、Design-Pointでの質量流量、入口圧力、温度をparameterとし、そこから幾何流路断面積が決まり、シミュレーション中の質量流量がoutputされる("流路断面積input-質量流量output")。云わば、input/outputが途中で入れ替わる。


出来上がったNozzleのExampleプログラムが下記。Nozzleとboundary等付随して必要となるComoponentの他に、この記事で紹介したものと同じ要領で、Real Outputの出力値が任意の値になるように拘束するComponentを置き、massFowRate sensorの出力を拘束している。但し、拘束が有効になるのは事前指定した時刻までだ。その時刻に、nozzleのinput/outputが、"質量流量input-流路断面積output"から、流路断面積input-質量流量output"へと切り替わる。そして、これらの時刻は、Propulsion System libraryのコンポーネントでよく使う定数を収め参照する用の"environment" componentに設定する。これは、Component毎に切り替え時刻を設定する手間を省くため。


そして、計算を実行した結果が下記。時刻1 [sec]までをDesign-Pointの計算を実行するように設定しており、Off-Designに移ってからは、時刻30 [s]以降(Design-pointを終えた後ならいつでも良い)に境界条件の値を変化させている。

意図した通り、Design-Point時間枠中で拘束した(inputした)質量流量でnozzleのthroat幾何断面積が決まり、Off-Design時間枠となってからはthroat幾何断面積を固定値に保ったまま、上流圧力の変化に応じて質量流量が変化させられている。

これらComponentのセット、恐らく推進機・Power system以外のmodelingでも役に立てられるのだろうと思う。排気ノズルの様な、流体が出口で外気に解放されるノズル/オリフィスのサイズを流路の幾何断面積ではなく通過質量流量から決めたいという場面は、概念設計では多々有るのではないだろうか。


PropulsionSystemではDesign-Pointで質量流量を与えたいという場面が多々発生するので、Handlingが良くなるように、上述の質量流量を拘束するcomponentの集まりを1つにまとめたものを用意した。それ以外は上述のexampleモデルと同じ内容だ。


実は本nozzleコンポーネント、主に戦闘機に搭載されている可変面積ノズルをシミュレートするために、Off-Designのsimulation中にthroatの流路断面積を変更する機能も搭載している。断面積変更とは言っても、飽くまでDesign-Pointで決定された値に係数をかけて拡大・縮小させるだけのもので、好き勝手に面積を直接与えられるものではない。


計算を実行した結果が下記。上流圧力を増加した後、時刻 50 [s] から 60 [s]にかけて、throat幾何断面積を0.9倍へと閉じるよう設定する。

throat幾何断面積を閉じるのに応じて、通過質量流量が減少するのが確認できる。このとき、throat幾何断面積の値が0.9倍へと縮小され、"des"接尾辞付きvariable "AmechThDes"は一定値に保たれたままとなっていることも確認できる。


漸く念願の、Design-point, Off-design計算の統合化を実際に実装・動作確認するところまで辿り着けた。今回はnozzle単体のみだが、次のステップは、turbojetエンジン全体で、Design-point, Off-designの統合計算を行えるようにする。これで複雑な構成のエンジンのsimulationが比較的容易に実施出来るようになったらtutorial documentを作ってまたハンズオンを実施出来ればと考えている。(需要・希望が有るか次第では有るが。)

以上
  


文献紹介

Modelicaによるシステムシミュレーション入門

入門者に最適の書。Modelicaって何?という導入から、簡単なコードベースやGUIベースの例モデルまで解説。筆者も入門時に手に取った。訳に少し癖が有る印象だが、英語書物がハードルになる方には確かな助けになる筈。


[楽天、電子書籍版] [AU payマーケット、電子書籍版] [7ネットショッピング、電子書籍版]
[楽天、紙面書籍版] [AU payマーケット、紙面書籍版]

Introduction to Modeling and Simulation of Technical and Physical Systems with Modelica

「Modelicaによるシステムシミュレーション入門」の英語版原書。英語に抵抗がなければこちらを入手したら良いと思う。


[Yahoo、紙面書籍版]

Principles of Object-Oriented Modeling and Simulation with Modelica 3.3 A Cyber-Physical Approach (Wiley-IEEE Press)

本格的にModelicaを使い込むなら必携の書。辞書的に適宜調べものをするような形で手元に有ると頼もしい武器。量が多いので電子版もお勧め。筆者もKindle版を所有し、かなりの頻度で参照している。


[楽天、電子書籍版]

Introduction to Physical Modeling With Modelica


[楽天、紙面書籍版]


------------------------------