唐突だが、今回はスターリングエンジンのモデルを作ってみる。PropulsionSystem libraryのdesign-point, off-designの統合で転んでいるのもあるが、以前から作成試みたいと思ってもいたお題だ。

例によって記事を通して言いたい事は冒頭で述べる。とは言っても、タイトルそのままだ。

  • 最も初歩的なスターリングエンジンモデルを作成した。そして意図通り動作した。


”スターリングエンジン”て何?詳しく知りたい、という方はWikipediaのページでも軽く一読願いたい。ここでその説明からすると長くなり過ぎるので省略。

車のエンジン等と同じく、ピストン・シリンダー式の熱から動力を取り出す機械なのだが、幾つか特徴がある。熱サイクルとしての効率とか色々有るが、身近なガソリンやディーゼルエンジンと特に異なる所を取り上げると、

  • 熱量投入に作動気体の燃焼を用いず、外部から熱を渡す。熱源・熱の渡し方は問わない。
  • 作動気体が封入されており、吸気・排気が無い。

感の良い読者様は、筆者が何を企んでいるか判るのではないだろうか。そう、原子力を利用した機関だ。シリンダに外部から熱を渡せさえすれば良いので、熱源の実装方法についての制約が少なく、原子力熱源を使いやすい。また、2つ目の特徴から、作動流体を吸気・排気する必要が無いので、(密封技術が要されるが)宇宙空間や潜水艦への適用が容易だ。モビルスーツだの、原子力航空機・航宙機と言った物騒なメカの動力源に向いている可能性が有るのだ。


下図が作成したモデルのダイアグラム。クランクシャフト等の機械部分が複雑だが、流体回りはシンプルで、2つのシリンダとそれらを繋ぐ流路だけだ。


下図はアニメーション再生時に表示される図。connecting rodが小さ過ぎたり、回転軸が大き過ぎたりと実物とそぐわない部分はあるが、機構としては必要な機能を持つものを組み立てられている。


モデルのinput。高温熱源温度を上げて作動流体への投入熱量を増やす。

以下、animation出力を録画したもの。multibodyのcomponentでクランクシャフトの機構が意図通り組まれ、動くことが視覚的に確認できる。

動画から読み取るのは難しいが、time=10 [s] までは、高温熱源と低温熱源の温度差が無に近くいため、軸で与えているlossのためにエンジンが徐々に減速する。そして、time=10 [s]から、上述の通り高温熱源温度を上昇させたことで非常に緩やかだが加速してゆく。



2つのシリンダ内のガス温度。最初は2つのシリンダに温度差が無いが熱源温度を上げるのに従って差がつく。ジグザグしているのはエンジンが回っていることで圧縮・膨張が起きているため。


2つのシリンダ内の気体質量。意図通り、片方が増えると呼応してもう一方が減る。加速を行ってからは2つの差が開く。これはピストンのストロークに対してシリンダ空間が大きすぎるということか。。。


クランクシャフトの機械回転数。加速前は、機械ロスと流路圧力損失のために原則してゆく。10 [s] 以後は意図通り加速している。ジグザグなのは、ピストン式だから仕方が無い筈。ピストン・シリンダのセットを増やして異なる位相に設ければ改善できることが予想される。(どれかが圧縮工程(=エンジンがpowerを吸収する)の時に、他が膨張行程(=エンジンがpowerを出力する)を行うようにして均一に近い加速を行わせる。)


軸のpower。0ほほぼ中心に振動しているのは、膨張行程ではエンジンがpowerを出力するが、圧縮工程ではエンジンがpowerを吸収するため。(投入されたエネルギの一部を使う。如何なるエンジンも、投入した熱量の総てを有効powerに変えることは出来ない)


高温熱源からエンジンに投入される熱量(単位は [W] )と、エンジンから低温熱源へ捨てられる熱量。上述と繋がる話で、如何なるエンジンも、投入した熱量の一部を低温熱源に排出しなければ機械として動作させられない。


一通り、それらしく動作していることを確認した。この先は、本モデルを使ってスターリングエンジンやピストン式エンジンについて深く考察して語るか、本モデルをさらに発展させてより複雑なエンジンシステムを創るか、今のところ未定。


本記事のモデルの情報を載せる。open sourceで公開しているので、是非ダウンロードして遊んで頂きたい。

  • 本記事のモデル: PropulsionSystem.Examples.Engines.Transient.StirlingTypeAlpha_ex01
  • 上記モデルを収録したライブラリ: PropulsionSystem githubページへのリンク

以上



文献紹介

Modelicaによるシステムシミュレーション入門

入門者に最適の書。Modelicaって何?という導入から、簡単なコードベースやGUIベースの例モデルまで解説。筆者も入門時に手に取った。訳に少し癖が有る印象だが、英語書物がハードルになる方には確かな助けになる筈。


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Introduction to Modeling and Simulation of Technical and Physical Systems with Modelica

「Modelicaによるシステムシミュレーション入門」の英語版原書。英語に抵抗がなければこちらを入手したら良いと思う。


[Yahoo、紙面書籍版]

Principles of Object-Oriented Modeling and Simulation with Modelica 3.3 A Cyber-Physical Approach (Wiley-IEEE Press)

本格的にModelicaを使い込むなら必携の書。辞書的に適宜調べものをするような形で手元に有ると頼もしい武器。量が多いので電子版もお勧め。筆者もKindle版を所有し、かなりの頻度で参照している。


[楽天、電子書籍版]

Introduction to Physical Modeling With Modelica


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